イギリスのR大学に留学していた近視読者ことミコーバーの日々の生活を描いたブログ。
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20170401:人類では勝ち目がないのです!
2017年04月01日 (土) | 編集 |
4月1日。



土曜日である。



世間的にはエイプリルフールというしょうもない日らしい。

私はこのエイプリルフールという習慣が好きではない。まるでアホ発見器のように、しょうもないことを呟き出す奴が続出する日だからである。
何年か前だったか、某所でリアルな知り合いが複数名、同じようなネタをつぶやいて失笑を買ったことがある。
それをながめやりながら、本当にこの日はくだらないと思った。
最近は企業が乗っかってきて、いかに盛大な嘘をつくか、というのが一つのトレンドになっているようだが、本当にショウモナイことはやめてほしい。
まあ、そう思うということ自体、私に余裕がない表れなのかもしれないが、、、


さて、タイトル関連の話を。

今日は、ある世界において非常に重要な日となった。

将棋のタイトルホルダー、それも名人位を持つ人間が、コンピューター将棋ソフトに負けたのである。


本日、第2回電王戦が行われた。
対局者は、人間側が佐藤天彦名人、コンピュータ側が、ソフト最強と言われるポナンザである。
佐藤名人は昨年おこなわれた名人戦で、当時名人だった羽生善治を4勝1敗で破り、見事名人を獲得した若手棋士である(年齢的には30歳手前で、その意味では世の中的には若手とはいえないのかもしれないが、将棋の世界では十分若手である)。また、単に名人になったのみならず、その後に行われた人類代表決定戦、別名「叡王戦」で見事並み居る強豪を打ち倒して優勝し、叡王の称号を手にした人物でもある。いまさらっと「並み居る強豪を打ち倒して」と書いたが、その中には名人戦以来、久々に顔を合わせた羽生善治も含まれていたことは特筆に値する。この将棋は私も見たのだが、重厚な矢倉戦から、羽生の攻めを完全に受けきり、最終的には入玉(相手の陣内に自らの玉が入り、まず詰まない=負けない状態を作ること)を果たし、完勝をおさめたという内容であった。この対局で、羽生はいつ投了してもおかしくない状態だったがなかなか投了せず、最後の最後、もうどうしようもなくなってから投了した。この、最近はあまり見せないしぶとさ、というかしつこさには、彼の「何としてもコンピューターと戦いたい」という気持ちが込められているように思われた。それだけに、その羽生を破った佐藤天彦が人類代表となることは当然であり、また必然であったとも言える。

だが、その佐藤天彦相手に、コンピューターソフトポナンザは勝利した。

それも、ただ単に勝ったわけではない。

対局はコンピューター側から見て「完勝」と言っても良い内容だった。お互いに一度も王手をかけることなく、最終的な決着がついたという事実からも、この戦いが大差のものだったということが読み取れる。つまり、駒が本格的にぶつかった段階で、勝負がついていたということである。


両者の力の差は、次の数字に明確過ぎるほど表れている。




1時間21分4時間59分




これはポナンザと佐藤名人は、両者の消費時間の差である。
この対局は持ち時間がそれぞれ5時間あり、その時間を使い切ると、1手1分で指さねばならない。逆に言えば、5時間以上いろいろな手を考えることができるということである。
だが、この対局でポナンザは、たったの1時間21分しか使用しなかった。実に、与えられた考慮時間の3分の1以下である。そもそも、最終的には1時間以上時間を使っているが、途中経過を見ていると、佐藤名人が3時間使ったところで、ポナンザはまだ1時間に全然達していない、というところもあり、両者の差は歴然としていた。

この消費時間の差が、明確に両者の力量の差と言える。

佐藤名人の指し回しは、決して悪くはなかった。実際、途中までは両者の形勢の差は、微差と言っても良い状況だった(ただし、その微差が埋まらないのは言うまでもない)。やがて佐藤名人から動き、それがうまくいかずに形勢を損ねていくのだが、途中までは互角に近い戦いを演じていたことは事実である。だが、その代償として、大量の時間を投入する必要があった。一方のポナンザはほとんど考えずに指す。

マラソンに例えるとよくわかる。よく、マラソンの国際大会を見ていると、先頭集団がかなりのペースで走っていることがある。その中には日本人のランナーも複数名おり、なかなか健闘している、という印象を与える。しかし、その後の何度かのペースの増減を経て、日本人ランナーは全滅、逆に最初から有力候補とされていた選手たちはその後もペースを落とさずゴールテープを切る。こんなシーンは何度も見たことがあるだろう。つまり、有力選手が余力を残して先頭集団についていく(あるいは先頭集団を作る)のに対し、日本人ランナーの多くは、全力でなんとかそのペースについていかねばならない。それと同じことである。結果、ランナーはエネルギーが尽き、棋士は時間が尽き、負けて行ってしまうのだ。力量の差は明らかであろう。


佐藤名人が弱いのではない。繰り返しになるが、ここに至るまでの佐藤名人の勝ちっぷりは見事なもので、彼が人類の代表であることに、異存のあろうはずがない。羽生なら勝てる、という人がいるとすれば、それは佐藤名人と羽生三冠の対局を見ていない、ただの素人に過ぎない(ただし、矛盾するようだが、羽生三冠のすごいところは、彼ならばやれるかも、と多くの人に思わせるところである。羽生三冠といえども、今のポナンザに勝てる確率は0.1パーセントとか、そういうレベルであろう。ただそれでも「羽生さんならその0.1パーセントを本番で引くのでは?」と人々に思わせる、そこが彼の真の魅力である)。しかし、その佐藤名人をもってしても、ポナンザには全く歯が立たなかった。



5月にもう一局、今度は佐藤名人の先手番で対局がおこなわれる(今回の対局は、佐藤名人の後手番だった)。
人間同士の対局でも、コンピューター同士でも、一般的には先手の方が若干勝率が高いと言われている。作戦を選ぶ権利があり、自分のやりたいことがやりやすい、というのが大きいのだろう(そもそも、相手より一手早くさせるのだから、その一手を生かせれば、勝ちにつなげることはできるだろう)。それでも、もはや人類では勝ち目がないのではないか、そんなことを思わせるのに十分な、今日の対局であった。
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