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イギリスのR大学に留学していた近視読者ことミコーバーの日々の生活を描いたブログ。
ツーシームはまだか
2012年03月15日 (木) | 編集 |
一抹の不安を抱かざるを得なかった。


先日のオープン戦の、ダルビッシュ有のピッチング内容である。

去る3月14日、アメリカ大リーグレンジャースに所属するダルビッシュ有は2度目のオープン戦登板に臨み、3イニングを投げて3被安打2失点の内容だった。この時期はあくまで調整がメインであり、2失点という結果そのものはさほどに意味をなさない。問題は、その内容である。被安打3、奪三振3はともかく、与四死球4、それも押し出しまでしてしまったとというのはいささか不安材料となる。

ここで少し、昔の話をしてみたい。
3年前のWBC、日本のエースとして期待されたダルビッシュは、しかし最終的には抑えとしての役割を担うことになり、優勝の時も、抑えとして最後の打者を仕留めた。当時のピッチングコーチの山田久志が述懐しているように、この配置転換は藤川を中心としたリリーフの陣容では優勝できないというチーム事情によるもので、ダルビッシュが先発では期待されたほどのピッチングが出来なかったから変更になった、という、いわゆる降格要素のあるものではない。それでもそこに至るまでの彼のピッチングを見てきた人間からすると(そして、同じく先発をつとめた岩隈が抜群のピッチングをしていたことを考えると)、どうしても負のイメージはぬぐえなかった。その最たる例が現れたのが、第2ラウンドの韓国戦である。ダルビッシュは早い回に失点を許し、その後は立ち直るものの、打線がよくわからない韓国のサウスポーに大苦戦し、結局苦杯をなめることとなった。重要なのはこのとき、ダルビッシュをリードした城島が、ほぼ完全と言って良いほど外角中心の配球に偏り、その内容も、ストレートとスライダーを中心としたものだった、ということだ。当時はまだブログという媒体ではなく、別の某所で心の赴くままの文章を打っていた私は、これは城島が臆病だからではなく、右打者のインコースをえぐるべきツーシームの制球が悪すぎるために、その球を捨てた結果こうなったのではないか、と予想する文章を書いた。今を持って、その答えはわかっていないが、少なくともあの重要な試合で、ダルビッシュはほとんどツーシームを投げなかった(註:ダルビッシュを紹介するとき、ストレートとスライダーに目が行きがちだが、実はインコースに食い込むツーシームが右打者にとっては非常に嫌なのだ。当時、アホみたいに曲がるツーシームで中島がバットを折られる、という映像が何度も流されていた)。この事例も含め、全体に制球に苦労しているな、というのがWBCでのダルビッシュの印象だった。

話を先日のオープン戦に戻す。
ダルビッシュは試合後のインタビューでこう語っていた。

「スライダー、カーブは良かったんですけど、ツーシームとストレートが良くなかった。」


WBCの時と同様、ツーシームが良くなかったと語っているのだ(ただしWBCについてはあくまで私の予想である)。果たしてこれは一過性のものなのか、それとも、、、いずれにせよ、制球に苦しんだ理由にこのツーシームの悪さが含まれるのは間違いない。


ダルビッシュは人並み外れた能力の持ち主であるが、その中でも特に何が優れているかと問われれば、私はおそらく指先感覚だと答えるだろう。メジャーキャンプの前半、バッティング投手として七種類の球種を披露した彼は、七種類の魔球を操ると絶賛されたと聞く(ただし、これは多少、というかかなり脚色が加わっているように思われる)。すべての球種がそれほど凄かったかどうかは別として、彼が自在にたくさんの球種を、それもかなり高度なレベルで操ることが出来るのは事実である。だからこそ、あれほど鋭いスライダーやキレの良いストレートを投げることが出来るのだろう。だが、これは逆に言えば、非常に繊細と言うことでもあり、それが微妙に狂うと思うような投球が出来なくなる。


現在のダルビッシュは異なる環境で異なる打者に対して戦いを挑んでいる。その中でも最も違うのは、やはり投手である自分の武器、ボールだろう。アメリカのボールと日本のボールが違う、と言われて久しい。日本のボールは昨年、統一されることで、比較的アメリカのそれと近づいたとされているが、それでも違いは少なくない。器用で繊細であればこそ、その違いは大きく影響するのだろう。MLBの公式球とWBCの球は同じである。先日の制球の乱れが、WBCの時と同じ原因(つまりボールの違い)で起こっているとすると、不安は禁じ得ない。もちろん、WBCの時もなんだかんだで仕事はこなしたように、彼が活躍できることには疑いの余地はないのだが、どの程度活躍するのか、となると、現状、答えに窮してしまう。


とはいえ、このような感覚の狂いというのは誰もが経験することである。そして超一流とそれ以外を分けるのは、その誤差をどれだけ正確に把握し、的確に対処できるかにあると言っても過言ではない。彼のような超一流の投手は、おかしなところがあればしっかりと修正してくるのは間違いない。私の不安が杞憂に終わるか、現実のものとなるか、お手並み拝見とばかり、楽しみに見ていたいと思う。
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