イギリスのR大学に留学していた近視読者ことミコーバーの日々の生活を描いたブログ。
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イチロー、最後の挑戦
2012年07月25日 (水) | 編集 |


野球好きを自認する人間からすれば、このネタについては書かないわけには行くまい。


個人的な記念日の2012年7月24日、現地時間で7月23日、シアトル・マリナーズのイチロー外野手が、突如としてヤンキースへと移籍することが決まった。

様々な情報を総合的に判断すると、このトレードはイチロー自身が望み、レギュラー外野手の故障で守備と足の使える選手を探していたヤンキースが触手を伸ばしたものらしい。ヤンキースは来季、イチローと契約するつもりはなく(少なくとも現状は)、残りのシーズン3ヶ月を戦うための、いわば短期移籍的な獲得らしい。

だが、イチローにとってはこの移籍の意味は大きい。

マリナーズに残留していたら、さらに契約延長を獲得できた可能性があるからだ。
若返りを図るマリナーズにあって、イチローはかなり浮いた存在だった。加えて、ここ2年一気に成績が落ちているため、仮に再契約が出来たとしても、その金額はかなり低いものになることが予想された。それでも、彼のこれまでの貢献と人気(これは地元での人気ということに加え、日本人観光客を呼び込める、という意味も含む)を考慮すれば、再契約のオファーが出される確率は低くなく、また、イチロー自身がそれを拒否する理由は見当たらなかった。

しかし、結果として彼は移籍した。それも、自分で希望して。


打率.261。HR4本。打点28。盗塁15。

これが、イチローが今季マリナーズで残した主要な成績である。

起用法が一貫性を欠いたことを考慮しても(ちなみにマリナーズの監督は、何故今季も監督が出来ているのかよく分からない人物であるが、どうもアジア人が嫌いな節がある)、一時代を築いた選手としては、かなり寂しい数字と言わざるを得ない。ある程度自分の好き勝手が通った弱小マリナーズから、常勝を宿命づけられ、(日本のどこかの球団と異なり)実際に常勝のヤンキースへ移籍することで、常識的に考えれば、成績が向上するとは考えにくい。下手をすると、彼にとって、これまでで一番厳しい3ヶ月が待っているかもしれない(今でもなく、一番厳しい3ヶ月、とは、ベンチを温める日々を指す)。

だがしかし同時に、この移籍が彼に大きな変化をもたらす可能性がないわけではない。
彼は今季の不調について聞かれ、このように答えている。

「紙一重のところでやっている」

言い換えれば、技術的にはヒットになるかアウトになるか、非常にきわどいところで戦っている、ということだ。その戦いの結果が.261という低いものであることを考慮すれば(低い、といっているが、むちゃくちゃ低いわけではない。マリナーズのレギュラーの大半は、この打率に到達していないのだから)、その「紙一重の戦い」にことごとく敗れている、ということだろう。

だが、彼の言うことが正しいとすれば、その戦いはすべて「紙一重」、きわどい勝負なのだ。大差で負けているのではない。ゆえに、うまく転がれば、紙一重で勝つことも可能になる。

イチローはその天秤をひっくり返すために、移籍という手段を選んだ。

イチローと同じく天才と称されたミスタープロ野球こと長嶋茂雄はかつてインタビューでこう述べている。

「心技体と言いますが、我々に大切なのは、そのうちの「心」でしょう。よく、イレギュラーしてヒットになることがありますが、それを「ツイてた」で済ますのはアマの発想です。我々プロは、そこに「心の充実」を見いださなくてはならない。心が充実していれば、何でもないような打球でも石ころを弾いてヒットになるんです」

グラウンドに石ころが転がっているというかなり恐ろしい発言はさておき、言わんとすることはよく分かる。技術を極めたものにとって、精神状態こそが何よりも重要、ということだ。

先ほど、イチローはマリナーズで浮いている、と書いた。これは何も、年齢だけのことではない。彼の野球に対する姿勢、勝利に対する姿勢、そういうものが、敗北を続け、負けなれた球団とは相容れないものになっているのだ。そのような環境下でプレーしていた彼の心が充実していたとは、どう考えても思えない。ヤンキースという、本当の意味での「戦う集団」へと身を移すことで、その心の充実を得ることが出来たならば、現在負け続けている紙一重の戦いに勝つことが出来るかもしれない。イチローが移籍を志願した理由は、そのあたりだろう。

賭けと言ってもよい。
チームの変更によって自身を取り巻く環境が大きく変わることはすでに書いたが、加えて、背番号も、打順も、そして守備位置まで、変わってしまうのだ。刺激と言うには生やさしいような、大きな変化を含んだ行為である。

果たしてこの劇薬が、心の充実をもたらすか?そしてその心の充実が、彼の紙一重の戦いに勝利を呼び込むか?

イチローの、ひょっとすると最後の挑戦になるかもしれないものに、今はただ注目したい。

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